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百景図よもやまばなし

第96図 謎の注連飾り

96元旦の早朝、表門を

潜る家中一統の図

である。朝四時ぐらい

というから、まだ夜が

明けていない。さぞかし

寒い時であろう。中間さんなどは尻からげで大変だ。

しかし皆さんの表情は、新たな年を迎えたということで、なんだか清々しそうである。

通常は通れない表門も、年始挨拶、初登城のこの日ばかりは開けられ、家臣団も熨斗目小袖と肩衣の

紋付裃で礼装して登城している。提灯持ちの中間は門内には入れず、ここで待つことになる。

どこか詰所のような所で、暖を採りながら待つのであろうか?

雪でも降りそうなのか、傘を持った者もいる。

「ややっ、これは何だ?」

屋根の下の注連飾りを見て驚いた。ただの注連飾りと思っていたが、

なんと本物の鯛が二匹いるではないか。しかも睨み鯛の形で。

こんなことがあるのであろうか?

調べてみる「掛鯛(かけだい)」といって西宮の戎神社では、正月に売っているようである。

京都でも、古くからの習わしとして、正月に飾っているところもあるという。

また、これを旧暦の六月朔日に食べると疫病払いになるという言い伝えもある。

そうだったのか。私の子供の頃にはどこの家にもなかった。知らなかった。

よく見ると、それを受ける藁飾りも何となく蝦の形にしてある。腰が曲がるほどの長寿と、

蝦の姿が鎧を纏った武士の姿と似るという縁起物か。それとも蝦で鯛を釣るといった福徳祈願?

鯛の周りの白いものはなんだろうか。形がはっきりしないが扇のようでもある。末広がりの縁起だ。

その周りの葉っぱは南天だろうか。難を転じるという縁起物。下はウラジロの葉と橙か。

橙の下にある、二重に折り曲げてぶら下げてある物の正体はなんだろう。

まさかスルメ?誰か知る人がいたら教えて欲しい。

それにしても今では珍しい注連飾りである。

インターネットで「掛鯛」と検索したら、この絵によく似た画像が出ていた。

後日談 あのスルメのような物、昆布ではないかという話。喜ぶ(よろコブ)という縁起物。

    そういえばそんな気もする。