1. HOME
  2. 百景図よもやまばなし
  3. 第9図 大名の庭園

百景図よもやまばなし

第9図 大名の庭園

9庭園を持つのは大名のステイタスである。

各地の大名は、それぞれの趣味のよさを競うかのように

造園をしている。

津和野の藩邸にあった庭は、養老館初代学頭「山口剛斎」が名づけた

「嘉楽園」である。

この絵はその庭の一角。

日本庭園のエキスのようなシーンである。

奥の築山は遠くの高い山を思わす。

そのわきから谷水が川となって、曲がりくねりながら

滝となって落ち、そして最後は大きな海となって茶屋の下に広がる。

落水の音が聞こえて来そうである。正面には青石の三尊石。その後ろには片枝を這わすように延ばした

不等辺三角形の老松。小さいながら根っこは土を鷲づかみし、くねくねと伸びる枝振りの描き方は、

まさしく狩野派の絵師格斎さんを彷彿させる。

大きな蘇鉄がある。蘇鉄は昔、富と権力の象徴のようなところがあった。

庶民にはなかなか手に入らない代物なのである。

この木、弱ったら鉄の釘を刺すと元気になるらしい。

鉄で蘇る(よみがえる)から蘇鉄と名がついたと辞書にある。

そういえばこの木の根元に、錆びた釘がばらまかれていたのを見たことがあった。

鉄は金物。別に金を食う木。この木は金がかかるという意味もあるらしい。

成長は意外と遅く、1メートル伸びるのに約40年ぐらいはかかるという。

広島県の廿日市市の蓮教寺の大蘇鉄は、昔津和野藩船屋敷にあったものだといわれている。

この絵の蘇鉄と何か繋がりがあるのだろうか。気になる。