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百景図よもやまばなし

第55図 高田の山のほととぎす

55目に青葉、山ほととぎす、初鰹

と江戸っ子が、夏の風物詩に

していた一つホトトギスである。

粋な江戸っ子は視覚、聴覚、

味覚で夏の到来を愛でたのである。

万葉集にも約150首ぐらい歌われているといわれ、

古来から親しまれている鳥である。ウグイスはホーホケキョだが、ホトトギスは

トーキョキョカキョクと鳴くので、その違いがよく分かる。

昔の人は、このホトトギスの初音を聞こうと夜通し起きていたようだ。

ほととぎす鳴きつる方をながむれば‥‥ただ有明の月ぞ残れる とか何とかの歌を思い出す。

それほど季節の移り変わりを楽しんでいたのだろうか。風流なことである。

この絵にも遠くに丸い月が見られる。格斎さんも夜明けまで待っていたに違いない。

この頃だと朝4時過ぎには明るくなるので、夜はさほど長くはない。

絵にはホトトギスが描かれているが、この鳥は、声はよく耳にするが、めったに人前に姿を見せない。

かわいげな鳥だがウグイスの巣に卵を産みつけ、他人に育児をさせるなかなかのしたたか者である。

津和野でも日原でも、今年はホトトギスの声をよく聞いた。

後日談 詠み人知らずの歌として「拾遺集」に

    「鳴けや鳴け 高田の山のほととぎす この五月雨に 声な惜しみそ」

    という歌がある。古来よりホトトギスの名勝地として名高かったのだろう。